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『リンダリンダリンダ』
リンダリンダリンダ 山下監督は感情移入の契機を作らずにドラマを生成させる天才だ。彼は出来事の結果をいかにみせるかではなく、成り行きをじっと見つめる。必然的に彼の描写の滞空時間は長くなるが、決してダラダラしていない。そこが天才たる由縁だ。
 "脱力の笑い"、"オフビート"と評されがちだが、山下監督の凄さは空間把握に発揮されると私は見ている。ほんの2、3カットみればそれは分かる。事実、私はオープニング直後の移動撮影を観ているだけでうっとりしてしまった。
■画面の奥行きの深さが凄い
 具体的に言うと、画面の奥行きが素晴らしい。例えば3人組の女の子がバンドのヴォーカルを誰にするか、思案している場面を観てみよう。彼女達と向こう側の校舎に、ぽっかりとした暗闇を挟んで奥行きのある空間が出来ている。この暗闇を介した空間に男子学生やバンドの元メンバーなどがやってくる。そして彼女達とぺ・ドゥナの最初の出会いは前田亜季がこの空間を横断し、向こう側の校舎の二人を遠景で捉えて、あっさりと片付けられる。

 部室のドアが閉じられないことにも注目しよう。軽音部の部室のドアに「開けたら閉める」とわざわざ張り紙がされているにも関わらず、そのドアを誰一人として山下監督は閉めさせない。安藤尋監督の『blue』や『ココロとカラダ』では(もしくはジャ・ジャンクーでも良いが)、密閉した部屋の中で人物を対面させることで映画的感性が研ぎ澄まされてゆくが、『リンダリンダリンダ』では部室のドアが常に開いていることで画面に奥行きが出来る。
 深夜の部室でバンドの練習をしている場面。あそこでドア越しに引きの画を持ってくるのが素晴らしい。並みの監督ならカメラを部室の中に入れて、彼女達を間近で撮りたくなるだろう。あの位置にカメラを置く人はそう多くはいない。

■中心を外し、スリルからもエモーションからも遠ざかる
 よくよく見てみると山下監督は、各場面の要所で重要な物事の中心を外している。普通なら外したくないポイントをわざと外して、本来見せるべきものを見せないで物語を成立させていることの天才だ。
 ぺ・ドゥナが最初にブルーハーツを聞く場面を思い出そう。彼女は泣いているらしい。しかしカメラは彼女の後頭部を収めるのみで、彼女の顔の表情は一切隠されている。また雨の中を走るぺ・ドゥナがひっくり返る場面。地面に倒れこむ彼女の姿をフレームオフしている。
 或いは『リアリズムの宿』の一場面。主役の二人が怪しげな外国人の露天風呂に入っている。外国人は「胸にすごい傷がある」と言ってシャツを捲りあげる。次の瞬間カメラは彼の後方に回り込むので観客はその傷を見ることができない。主人公たちの「うわ!」という叫び声から傷の程度を推し量るしかない。
 またヒロインの小野真知子が海辺で水着を流されてしまい、主人公の男達にめがけて走ってくる場面。ここでも小野真知子の裸の姿を判別できないほど、カメラはロングショットに位置することとなる。
 涙・転倒・傷・裸。他人に見せては恥ずかしいものと、私達が古くから教えられているものを山下監督は一切カメラに収めない。この種の恥の美学は山下監督の抑制と深く結びついている。
 ラスト近くの場面。前田亜季は男の子に告白しに行っている。一方で学園祭の舞台では準備が進められている。演奏時間も残り時間も5分と残されていない。前田亜季は舞台に間に合うのか?と思ったら、すぐに彼女は戻ってくる。山下監督はタイムリミットに間に合うかどうか、というハラハラとした演出をあっさり捨てる。普通のアメリカ映画なら前田亜季の告白と舞台上で到着を待つ他の3人をカットバックするに違いない。

■だが、それにしてもセーブし過ぎか?
 それにしてもラストのライブの場面が収束気味のようにも思える。もっと派手にクラッシュするものと思いながら観ていた。聴衆も完全に背景と化してしまっている。
 人気の無い廊下や下駄箱などの無人ショットに彼女達の演奏を重ねて映画が終わるのは、どうしてなのだろう。アンチ『スィングガールズ』的なものを狙っているのだろうが、ライブの場面は山下監督の資質とは遠いものなのだろう。
 一番感動したのは湯川潮音が「The Water is Wide」を歌う場面だった。4人組のバンド演奏よりも、何故か湯川さんの単独のアカペラの方が数段感動を上回った。つくづく歌声の持つ力は凄いと心底思う。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2006/08/29 21:56 】 | 日本映画 | コメント(0) | トラックバック(1) | page top↑
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独特のユーモアを随所に散りばめながら切なさやら寂しさをほんのり描く山下敦弘監督が独特の存在感あふれるペ・ドゥナを主人公に迎えブルーハーツの“こころ”を描いた!高校生活最後の文化祭。韓国から来た留学生ソンをボーカルに4人の女子高生がブルーハーツに挑戦。本番 パラパラ映画手帖【2007/04/15 02:35】
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