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『花よりもなほ』
花よりもなほ 是枝監督は社会からドロップアウトした人間を描き続ける男である。『ディスタンス』から『誰も知らない』に至って、現代社会への異議申し立ての度合いがますます強まってきたように思えたのだが、ここで一転、『花よりもなほ』で時代劇仕立ての風刺映画を試みた。
 いわゆる現代風の時代劇をやるという困難を是枝監督は百も承知だろう。どうしたって山中貞夫というビッグネームと比較される運命にあるのだ。実際、仇討ちという主題も『丹下作善 壱百萬両の壺』にちょっと似てたり、浪人役の香川照之は『人情紙風船』の河原崎長十郎みたいだったりするのは、是枝監督の照れ隠しのささやかな表明のようでもある。
■反時代劇
 『花よりもなほ』には多種多様な人間が出入りする長屋が用意される。おぉ、『人情紙風船』の再現か?と思うのは早合点というものだ。
 是枝監督は「今回は娯楽なんですよ」と言う。とはいえ、そこに『誰も知らない』のツメ跡が散らばって見えるのは、決して早合点ではない。
 岡田准一の暮らす部屋と接した隣部屋の状況は簡単に分かってしまうし、或いはかわやで用を足している者を誰かが外から覗き見るという、すこぶる風通しのよい舞台を設定してみせた。せっかく江戸時代の昔に時代を設定するのだから、とでも言うように、『誰も知らない』での社会から隔絶したマンションの閉鎖空間から、『花よりもなほ』はとことん遠ざかっているのだ。

■反『誰も知らない』
 『花よりもなほ』は『誰も知らない』を反転させたものである。子は親から何も与えられないという『誰も知らない』に反し、『花よりもなほ』では、親は子に何を与えられるのか、と是枝は問いかけている。
 仇討ちに逡巡する過程で、岡田准一は武士道だけではなく囲碁の打ち方を父親から授かったことに気付くだろうし、赤穂浪士役の寺島進は息子にカッコ良さではなくワラジの結び方を息子に教えることを選ぶだろう。そして彼らは「仇討ち」という血の通っていない大義名分からドロップアウトしてみせる。
 だが安心してはいけない。親から子へ伝えられるものは、等しく良い物ばかりとは限らないことにも是枝は十分に自覚的だ。
 やさぐれた男の加瀬亮はどうやら親からの虐待によって人生を狂わされたようであり、彼の幼なじみの夏川結衣にも親の都合が働いていることが暗示されている。この一組の男女を置くことにより『花よりもなほ』は現代性を保ち、本作が是枝の見た夢物語に回収されるのを辛うじて回避している。
 しかし代官の目を欺くために、死んだふりした人間持ってくるとは。これぞまさしく「仮死の祭典」。うふっ。

■ドロップアウターの明日はどっちだ
 密接な隣人関係を持ち得る長屋も、健全な(?)社会にしてみれば実は排除の対象だ。見方を変えれば、社会的最下層に位置する長屋の住民全体がドロップアウターの集団とも言える。仲間意識は彼らの内だけに通用するものなのだ。世間の連中は、赤穂浪士の仇討ちから抜けてきた寺島進に容赦のない罵声を浴びせたではないか。暗い夜道をひとり逆方向に走り出す寺島進の後姿にドロップアウターの孤独がひたすら際立っている。
 ところで都合よく仇討ちを終えた岡田准一のこれからの人生はどうなるのか。義務を果たした以上、長屋に居続ける理由はない。だとしたら藩に戻り、上流階級ではあるが封建的な武士道生活を再びおくることになるのか。彼の長屋生活はモラトリアムだったのか? そのあたりの未来がちょっとぼかしてあり、岡田准一の穏やかな微笑みで映画は幕を閉じる。
 恐らく是枝のまなざしは再び現代に向けられるに違いない。『誰も知らない』のラストで、子供達の行く末を見守るような視点で送り出した彼は、次にいかなる問題提起をするのだろうか。

■素足フェチよ、永遠なれ!!
 是枝作品で人物の素足を今まで何回見たことだろうか。今回も負けてないぞ。
 浅野忠信の自宅に斬りこもうとするが躊躇し、岡田准一の草履が脱げてあらわになる素足。父親の手配書を戸棚から取り出そうして背伸びするときの子供の素足。夏川結衣が子供達と”けんけんぱ”して遊ぶとき着物のすそから、あらわになる素足。
 なんでそんなに素足に拘るのか。ま、多分、個人的な趣味なんでしょう。

テーマ:映画レビュー - ジャンル:映画

【2006/07/05 20:57 】 | 日本映画 | コメント(0) | トラックバック(2) | page top↑
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花よりもなほ/岡田准一、宮沢りえ、浅野忠信
ケルトミュージックのような旋律の主題曲が、観る前も観た後も頭の中に鳴り響いてます(笑)。時代劇なのにとってもほのぼのとして、これってもしかしてスローライフムービー?なんて思っちゃうくらい、のんびりとした時間の流れがとってもいい感じでした。+++ちょいあらす... カノンな日々【2006/08/16 16:32】
花よりもなほ
日本の過去から届いた「戦わない強い意志」ちゃんと受け取りました。 Akira's VOICE【2006/08/17 17:55】
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