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『カノジョは大丈夫』
■ギターの音色
 映画の冒頭から、印象的なギターの音色が響いていて、スッと作品世界に入り込める。因みに私の頭の中には、『カノジョは大丈夫』の音楽がこびり付いて離れない。目を閉じたら、あのギターの音色をいつでもを思い出すことができる。

■深みのある画質
makino.jpg近年の自主映画の映像の技術レベルの向上ぶりは凄い。室内の暗闇、茶色の色彩で統一された喫茶店内部、明け方の青白い空と空気の色、・・・こういった場面ごとの映像の質感の違いが、ちゃんと出てて素晴らしい。もはや画面の質を観ているだけでは、一般映画と自主映画の区別がつかなくなりそうだ。

 映像が良いと言っても、それは映画を褒めたことにはならず、映画監督の力量・資質とは別のものでしょう。
 最初に前野と牧野が出会う場面。前野が自転車で近づいてきて、歩く牧野に追いつく。歩道橋のようや場所で撮られているが、このロングショットは素晴らしい。いつもの安川有果監督の映画と同様、『カノジョは大丈夫』でのカメラ位置は的確であると思う。アントニオーニ風と評されること多いそうだ。
 構図・逆構図の切り返しなどは決してしないので、画質を見るとジャ・ジャンクーかエドワード・ヤンの手触りに近いように思う。人物のありようは、オルドリッチ的か。

■映画の語り口
maeno.jpgでも今回の『カノジョは大丈夫』では、映画の語りの上手さを感じる場面があります。
 前野が牧野に贈った可愛らしい洋服が、カットが変わると、古着屋に安値で置いてある場面などは上手いと思う。
牧野が昔の先輩(板倉善之)に偶然出会う。久しぶりに会ったので、飲みに行こうという話になる。ショットが変わって前野が自宅に帰ってくる場面。当然牧野は先輩と一緒に居るだろうと、大方の観客は思うだろう。だけど何故か牧野は、見たことも無い外国人と鍋をつついているという、この裏切りの面白さ。

 前野朋哉さんは何をするにも面白い役者なので、見ていて飽きない。彼の目を通してから見た一人称映画のスタイルであるが、実は、女性に重心が置かれている。実は戦略的な映画。『カノジョは大丈夫』には、「人物の葛藤が描かれていない」という意見があるとも聞いた。人間の葛藤を描くよりは、男がモジモジと懊悩する描写を積み重ねたほうが、この映画にはよっぽど向いている思う。

■ボタンの掛け違い
 『カノジョは大丈夫』は吉田輝男(前野朋哉)と明石幸子(牧野鏡子)のすれ違いの物語だ。男が女に騙されているように見える、という意見もあるらしいが、そうは見えない。私には牧野が悪い女性には全然見えない。(夜中にこっそり起きて、財布の中身を泥棒するのは、ちょっとマズイと思うが。)
 前野が牧野に、「女性にこうあるべし」という価値観を一方的に投影しているのこと。
 全然関係ないけど、『ぼくらはもう帰れない』(藤原敏史監督)でも、女性と上手く付き合えない映画好きの男性が出てくる。藤原監督は”シネフィル批判”と仰っているそうです。『カノジョは大丈夫』の男女の描き方を見ても、ひょっとしたらこれは男性批判かも、とも思えてきそうだ。

itinose.jpgバイトの同僚の女の子(一之瀬美和子)に「その女のどこが好きなんですか?」と問われた時、前野は「放っておけない感じかな」と答える。
既にこの時点で前野は彼女の性格・人格・特性を見誤っている。付き合うスタート地点からボタンを掛け違えているのだ。
 牧野は庇護を受けるべき存在の人ではないと思われる。同情をして欲しいとも牧野は思っていないだろう。何をかいわんや、”カノジョは大丈夫”なのである。ここまでタフで、到達していて、透徹している女性が現実にいるかとういうと、稀に居ると私は思う。これは彼女の素なのか、天然なのか、いや、それとも他人には言えない事情を内面に実は隠し持っているのだろうか、

 よくある普通の映画だと、牧野の知られざる内面や心の脆さ、などを描くエピソードを入れたりもすると思うのだが、そうはしない。女の弱みは絶対に見せない。ハードボイルドとも評される安川有果監督の真骨頂だ。
牧野は前野から追い出される。明け方の道を彼女はテクテクと歩く。ここで美しい空のショットがインサートされる(朝焼け?)。空のインサートショットは『幸恵』でも見られたものであり、安川有果監督の映画では何らかの転調を意味するものである。

■カノジョの変化
 次の場面。道端で歌うミュージシャンの傍を牧野が通る。以前に、前野と牧野がデートしたときにもこの路上ミュージシャンは登場しており、ラストでも反復させている。ミュージシャンを見つめる牧野には、何らかの変化が生じているように思える。顔の表情など、全体の雰囲気から、そう読み取れる。
 エンディングで、牧野は若い男達にナンパされる。しばらく無視していたが、突然彼女は笑いだす。あぁ私ってこうなのよね、と受け入れきっている女の余裕が醸し出されている。カノジョは大丈夫。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2010/05/26 23:19 】 | 自主映画 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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