
現時点でまだ『僕は妹に恋をする』を1度しか観ていないため、何か見落としがあるかもしれない。素晴らしい出来栄えには違いないが、まだちょっと考えることが多いので続きを書きます。
まず、頼と郁の二人に血の繋がりに呪われた感じが薄いような気がした。これがジャニーズのタレントが主演でなければ、それにVシネマか何かであれば、もうちょっとエゲツなくかませたかもしれない、とも勝手に思う。
それはそれで、安藤監督の鬼の長回しが炸裂するので、こちらとしては息を止めて画面に集中しなくてはなるまい。
ところで安藤尋監督の映画の面白さは二人の関係の変化にあると思っている。『ココロとカラダ』の女の子二人は、被害者と救出者→サゾとマゾ→共犯者同士、と次々に関係性を変化させる面白さがあったが、『僕は妹に恋をする』の郁は徹底して受身だ。”受身ゆえの怖さと凄み”というのもあろうかと思いますが、『ココロとカラダ』の知美の危なさまでには及ばない。
楠という同級生の女の子も活躍して欲しかったかな。あの女の子がもうちょっと主張して、頼と郁を引っ掻き回すのかと思っていたのですが・・・特に物語に揺さぶりをかけるようなことはしないという。
ああこれは”二人で一緒に地獄に落ちましょう”と言う映画かな、と思って観ていたのですが、地獄に到らず途中で引き返すのですね。『僕は妹に恋をする』の若い二人は苦~い挫折を味わうという、甘酸っぱさ皆無の挫折の青春映画なのだ。
血の繋がりを超えた、恋愛関係でもない特殊な関係にまで二人を昇華させたら、より凄い映画になっていたかもしれないとも思うが、そうなったら映画館に詰めかけた若年層の観客には危険すぎるかもしれない。