冷静さを欠いた文章で、映画の感想文を書き散らかします。文を書くことは、恥を書くことだ、と開き直ることにします。書いた後に凄く恥ずかしくなります。
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大阪の心斎橋にあるカフェ裏CO2にて鑑賞。
思い起こせば西尾孔志監督の作品を初めて観たのはシネトライブ2004での『ループ・ゾンビ』だった。一風変わったコメディだったと思う。台所が別の場所にリンクしていて、ある男がある地域から抜け出すことができない、という筋立てだったように思うが、詳細は想い出せない。 どちらかというと、僕は『ループ・ゾンビ』よりも同じ日に観た『赤を視る』(浅川周)のドライヤー的な静謐さに惹かれてしまっていたのである。 鑑賞当時、『ループゾンビ』を撮った監督さんが『ナショナルアンセム』ような傑作を劣りになるような御方だったとは、『ループゾンビ』を見た限りでは想像できなかった。僕の眼は節穴だったということだ。いや恐らく今もって私は『ループゾンビ』の素晴らしさを理解できていないのだと思う。映画の内容が思い出せないのが悔しい。冒頭、プラネットシアターの富岡さんがサングラスをかけてカジノの客の役で出演していたことは何故か良く覚えている。拳銃も出てきたかな・・・、やっぱり想い出せない。やっぱり悔しい。 |
大阪の心斎橋にあるカフェ裏CO2にて鑑賞。
噂どおりの凄い出来栄え。黒沢清を影響を組みつつも、映画そのもののテンションが得体の知れない相貌に高まっている。映画の前半、姉妹のうち精神のバランスを崩し気味の妹の目が世界の異変に気づく。 狂っているのは妹の方か、それとも世界の方か。という具合に、妹の目を通して世界の歪さが露になってゆくのかしら・・・と思っていたら、連続発砲事件、刑事の捜査、教師の殺人というふうにジグソーパズルのピースが複雑に絡み合いながら世界の破綻が示され、最後には教師『ドレミファ娘の血は騒ぐ』のごとく個人の、それも女性の闘争映画へと軽やかにシフトする。『ナショナルアンセム』は、私達の見慣れたこの世界に亀裂を生じさせ、全く違う局面へと誘う闘争そのものの映画である。私達もボンヤリはとしていられない。よく考えてみろ。そして気づけ、世界の危うさに。と『ナショナルアンセム』は観る者に囁きかける。 ふいに『ドクトルマブゼ』(F・ラング)のラストでマブゼ博士が人質を取ってたてこもる場面が思い出される。投降を呼びかける警察に対して、マブゼ博士が「私は国家である」と宣言するのであった。日本語の字幕ではそのあたりがちゃんと表現できていない、と高橋洋氏がプラネットシアターでトークショーをしたときに仰っていた。 それはさておき、映画自体が素晴らしいので、「素晴らしい」と言うしかないのだが、それでも一寸だけ個人的に腑に落ちない点を書き連ねてみる。不発弾の発見に端を発し、戦時中の日本軍の怪しげな開発が研究所から漏れ出し、それに当たった人間が狂いだすという設定がなされていたように思う。世界が崩壊するのに明瞭な原因が特定できてしまうのが、個人的には物足りなさを一寸感じた。ワケもなく世界が壊れてゆく方がもっと恐ろしく感じられるのではないか。なんの説明もなしに、突如、自動車の後部座席に現れた少年の幽霊の方がよっぽど恐ろしい。いや、ほとんどこじつけで言ってることを自覚していますが・・・。 |
随分昔のトークショーにおいて、黒沢清が「この映画を観たとき、撮られた時代はいつなのか、いくつくらいの年齢の人が撮ったのか、撮った人は男性なのかそれとも女性なのか、全く判別がつかなかった」と仰っていたのを覚えている。
私は何年か前の京都国際映画祭で初めて観て、強烈なインスピレーションを受けたものだ。背後で鳴り響く『ビデオドローム』の音楽は今なお鼓膜に焼き付いて離れてくれない。 あらゆるショットがただ写っているだけで不穏な光彩を放つ、ということがこの映画では起こっている。駐車場に停まっていた車がスーッと動き出すだけで恐ろしい何かが発動しているような錯覚を覚える。恐ろしい何かが。口に出しては上手く言えないが。 |
去る11月3日、心斎橋のカフェ裏CO2で高橋洋氏と飲む会に参加する。
高橋洋氏の次回作も勿論ホラー映画だそうで、劇中劇を活用して恐怖を描くらしい。たぶん『女優霊2』のことだったと思う。 『LOFT』の話になると高橋洋さんは、黒沢清にもっとアメリカンに撮ってほしいと仰っていた。『CURE』公開当時の頃から一貫して考えは同じなのだろうか。 いわゆる小中理論に慣れてしまって『LOFT』の安達裕美があまりコワくなかった、人物をすっと遠景で立たせるという幽霊演出の小中理論に対するアンチテーゼのようにガバっと幽霊がおそってくるという清水監督の『呪怨』も出尽くしてしまった、小中理論や『呪怨』を超えるような恐怖演出が現れるだろうか、 と、僕が恐れ多くも言ったら、 「さらにもっと怖い映画を撮る」と高橋洋さんは仰った。 果たしてどのような恐怖が映画の未来にあり得るのだろう?良く分からないが、ウキウキと心待ちにしておこう。 |
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